今回、私が執筆した論文:中国残留帰国者問題の研究-その現状と課題―を掲載します。
少しでも多くの皆様に中国残留帰国者に対するご理解を深めていただき、区市町村などの自治体等においても、政策立案の一助になればと思います。
足立区で生活する中国残留帰国者の数は、東京23区で見ても、江東区176名に続いて第2位の168名です。
昭和20年当時、中国東北地方(旧満州地区)には、開拓団を含めて約155万人の日本人が在住し、ソ連参戦後、これらの人々が、混乱のうちに避難を開始し、このような状況の中で、両親、兄弟と死別し、または生別し、孤児となって中国人に引き取られたり、中国人と結婚をし、中国に残る子どもや婦人などが数多くいました。
日本と中国は1972年に国交正常化。
その後1981年より、中国で生活を余儀なくされた方々の訪日、肉親捜しが開始され、このような中で、日本へ帰国をされる方、中国での生活を選ばれる方々に分かれました。
戦後、60年以上の歳月が過ぎましたが、まだまだ戦争の犠牲者が苦しみ続けているのが現状です。
日本政府がこの問題に積極的ではなかったことが、この問題の解決策を長期化させた原因でもあります。
この論文では、
① 中国残留帰国者に対する理解を深める取り組みの必要性
② 帰国者の高齢化に伴う介護支援の取り組みの必要性
③ 2世、3世問題の取り組みの必要性
④ 地方自治体、地域社会の取り組みの必要性
など、新しい支援制度に基づき、実効性のある支援事業を行うための今後の課題について、考察・提案を行っています。
国の制度設計がようやく終わり、試行錯誤しながらも本格的に支援事業がスタートしました。その後、現在に至るまで、様々な課題が見えてきました。
今後も、帰国者の皆様からご意見・ご要望を引き続きお聞きしながら、国や関係機関に積極的に働きかけ、同時に他の自治体などの取り組みを調査し、参考にしながら、「足立区で生活する全ての人が安心して暮らせる、やさしい街づくり」を目指して、全力で取り組んでいきたいと思います。