現在、発達障害者支援施策を足立区から構築するために、日々、調査・研究しています。
参照:2013年3月議会の代表質問の内容「成人の発達障がいの支援策について」
各ライフステージに合わせた発達障害施策をどのように進めて行けば、より効果的な施策として、当事者やその家族を救うことができるのか、専門家のヒアリングや様々な文献を読み進めていくうちに様々な発見がありました。
中でも一番、支援が困難で難しい領域が「青年・成人期の発達障害」への支援となります。
今日は、「青年・成人期の広汎性発達障害を持つ人とその家族への訪問看護の役割について」書かれた文献が大変興味深い内容でしたので考察したいと思います。
先ず、広汎性発達障害とは、社会性、コミュニケーション能力、想像力の三つの分野で自閉的特性の見られる障害全ての総称をさします。
広汎性発達障害は、脳機能の生まれつきの障害です。発達上の広範囲の領域で様々な障害が見られます。
広汎性発達障害は、自閉症、レット障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害(PDD‐NOS)などに分けられています。患者の年齢、知的レベル、育った環境によってほぼ無限と言ってよい症状が現れ、適切な診断は専門の医師でも大変難しいものとなっているそうです。
広汎性発達障害の人たちには、人との関わり、会話、こだわりなど対人関係面での障害が見られます。
その当事者によって症状の出方が異なるものの、
例えば、
・目と目を合わせない。
・ルールを守らない人が許せず、相手が誰であれ、又状況がどんなものであれ、注意したり怒ってしまう 。
言っている事は正論の場合が多いので、厄介。
・異性に対してベタベタしたりするなど(客観的に見て第3者がそのように見えても、本人は、本人なりの理屈があってしているらしい)、他人との距離感がおかしい 。
など、このような行動が大人になっても顕著に見受けられます。
この文献では、訪問看護ステーション並びに発達障害者支援機関(全国の発達障害者支援センター・精神保健福祉センター・地域活動支援センター・就労支援事業所・精神科病院)のスタッフに対しての調査内容に関して、様々な質問をしています。
訪問看護スタッフについては、主に具体的な支援内容やその困難さ、訪問看護の役割について、発達障害者支援機関のスタッフに対しては、訪問看護に対する期待やその効果についての質問です。
訪問看護のスタッフに期待する役割として以下の内容が挙げられています。
社会とのつながりの支援
生活の構造化やリズムを整える支援
社会的スキルの獲得の支援
対人スキルの向上の支援
二次的な精神症状の支援
身体管理についての支援
理解者として寄り添う支援
成功体験を支援する関わり
家族支援 など・・・
細分化した内容では、当事者や家族に対する配慮が記されています。
・孤立させない
・昼間の過ごし方や余暇活動、睡眠のとり方について一緒に考える
・生活構造化の支援
・パニックの対処法についての支援
・医療機関に定期的に通えるよう支援する
・独特のこだわりから食生活の偏りが多いので栄養バランスが取れるよう支援する
・疲労に気づけなかったり、体調管理がうまくできないので、身体管理について支援する
・よき理解者として本人に寄り添う
・本人が感じている不安を傾聴したり、安心できるよう支援する
・成功体験を増やして自信を持ているように支援する
・本人の特性に合わせ、日常生活の中で成功体験がつかめるよう支援する
・家族の不安や辛さを傾聴する
・家族関係の調整を行う
・家族のレスパイトケアを行う
また、この調査の困難さとして以下の点が挙げられていました。
・障害特性によるコミュニケーションの難しさ
・パニック時やこだわりへの対応
・様々な質問に対して納得できる説明をすることの大変さ
・生活の構造化や家族内のルール作りの支援のむずかしさ
・家族支援の困難さ
成人期まで至ってしまった発達障害者は、生活リズムも本人独特のものがあり、家族と合わせることができないようです。また、独自のルールを本人が持ち合わせており、それが家族内の生活に合わない場合には、本人が納得する説明を家族が何回も繰り返し、丁寧に行わなくてはいけません。
それを壊されるとひどく反発したり、慣れが出てくると自己主張を強く押し出し、日増しに自分にすべてを合わせようとして、家族を振り回すという傾向が顕著に表れます。また、どんどんその行動がエスカレートし、本人が自分の感情を抑えられずに、いっぱいいっぱいで自分のことしか考えられないといった言葉や、自殺すると言い、暴言を吐きながら家を飛び出す行為を何回も繰り返します。
2011年より、発達障がい者に自立支援医療が適用されるようになり、発達障がいの診断のみでの訪問看護支援が導入されています。
足立区では、発達障害での枠だけでない訪問看護支援を受けている人は9000人が支援を受けているそうです。しかし、実際に発達障害で訪問しているのは聞いたことがないとの話でした(利用者は統合失調症の方々が多い)。足立区として、この支援が進んでいない理由としては、そもそも発達障害の診断名をつけられる専門的な医師が全国的にも少ないことや受容がどれだけあるか把握ができないことが挙げられるそうです。
確かに、国としても、成人期の発達障害という分野自体が遅れているために社会整備が進んでいない現状があります。また、それを専門分野にしている医師からは、本人にレッテルを張るだけになってしまうため、顕著にその症状が本人に出ていても、本人が自覚しない場合には、診断名をわざとつけない場合が多くあると言われました。
成人期に達した時点で顕著に症状が出ている当事者をどのように支援していくのか、またさらに成人期まで達してしまった当事者を囲む家族の置かれたすさまじい状況をどのように支援していくのか、大変難しい課題です。
この文献からは、訪問看護を行うことが、有効的な一つの解決策でもあり、家族だけでは乗り切れない困難さが現状にあるという事実を示していました。
診断名がつけられずに困っている当事者や家族を含めた支援を、訪問看護という側面で行うことの有効性とその重要性を認識しました。
現状においては、訪問看護の支援方法やその技術は確立されているとはいえません。
家族の過大なストレスと当事者の2次的な精神症状を緩和させるためにも、継続的な精神治療と同時に訪問看護のサポートが必要であると感じた次第です。
当事者を抱えた家族は壮絶な苦しみと辛さを抱えています。
家族支援までつながる支援の一つとして、訪問看護の役割についても今後、研究を深めていきたいと思います。