今日は、東中野で行われたユニバーサルデザインの研究会に出席をしました。講師は東北工業大学 工学部建築学科 石井敏教授です。
本日の研究は、「フィンランド・高齢者施設について」です。
教授の専門は建築計画学で高齢者の施設計画、高齢者居住環境計画をテーマとされています。昨年5月から12月までをフィンランドで実際に生活をし、現地で高齢者施設の研究に取り組んでこられたそうです。
出席者は100名ほど。大勢の参加者で会場は賑わっていました。会の中で自己紹介もありましたが、議員は私一人だけで、あとは地方からもユニバーサルデザインを研究されている建築士や企業の方、また障害をお持ちの皆様が参加をされていました。
このセミナーは、CPD(建築士会 継続能力開発)制度による単位認定が含まれています。
現在、フィンランドでは日本と同じように急激な高齢化に頭を抱えており、スウェーデンやデンマークのように、「住宅政策」の中で高齢者ケアを位置付けてきたものとは異なった新たな取り組みを模索しています。
フィンランドの高齢者福祉では、出来る限り在宅で暮らし続けられるシステムに焦点が置かれており、住宅を起点とした介護やそのほかのサービスを付随させたサービスハウスがその中心となっています。
民間NPOによる事業・運営が多いことも特徴で、フィンランドのケアは、あくまで自立をサポートするものであり、ケアをすることはサービスではなく、必要最低限保証しなければならないものと位置付けられています。ケアをする人とされる人が対等な立場に立っているそうです。
老人ホームでは、療養型医療施設として24時間365日のケアを保障しています。利用料は収入に関わりなく、収入の85%を徴収し(最低97ユーロを残す)、居住費、食費、薬代、ケア費用込となるそうです。
但し、自治体の負担が重くなるばかりになるので、施設を住宅にすることで利用者自己負担分を増やし、必要な部分の国の社会保障によって支える仕組みをつくっています。現在、施設から住宅(サービスハウス・ケア付き住宅)へという流れをつくることで、自治体の負担分を減らす取り組みが行われています。サービスハウスなどでは、「施設」という制度上の枠組みを残しながら、分譲、賃貸借のアクセシブル※な一般住宅にサポートをつけているそうです。
※アクセシブルデザインとは:これまでのバリアフリー(障害を取り除く設計)、ユニバーサルデザイン(すべての人が利用できる設計)から一歩進み、障害のある人もない人も、高齢者もそうでない人も、ともに使いやすい「共用のデザイン」を指します。
一人あたり、トイレ、シャワー付き、40m2程度の居住スペースが一般的で、グループホームでは、居室22.5~25m2程度、残りを共有空間に拠出しているそうです。
フィンランドでは、このように施設から在宅、住宅へと可能な限り在宅で暮らせる仕組み、環境づくりを目指しています。その中で、アクセシブルな住宅を目指し、エレベーターの設置を最重要課題としており(国からの補助50%、自治体による上乗せ5~15%、毎年約500基の改修予算が組まれています)、高齢者にとってやさしい住環境が提供されています。
確かにアクセシブルなデザインの住環境は、国で進めていく重要な課題の一つでもあると感じます。日本が目指すべき方向性として、他国の先進事例を見習いながら、出来るところからの取り組みを積極的に進めていくことが必要不可欠です。
区議会議員として、諸外国に視察に行くことはまだ一度も経験をしていませんが、最近、研究テーマが増えることにより、諸外国の取り組みに関しても、学ぶべきことがたくさんあることに気が付きました。常に探究心を持ちながら、その研究を掘り下げ深めていくと、諸外国の取り組み事例が大変参考になる場合があります。その上での諸外国の視察も必要ではないかと感じる今日この頃です。
今後も自分自身の研究を深め、さらに先進的な事例を参考にしながら、足立区から、すべての人にやさしい街づくり(住環境)を目指していきたいと思います。
私からの質問に対しても、石井教授からご丁寧に回答も頂き、大変勉強になりました。
本日は、本当にありがとうございました。