引き続き、神奈川県立田奈高校の視察の内容です。
田奈高校が就労支援として取り組みを進めているのが、バイターン※です。
※バイターンとは、アルバイトとインターンを組み合わせた新しい言葉です。
アルバイトの場合、就職に繋げることはなかなか難しいものです。しかし、決まったお金を得ることは出来ます。一方、インターンは就職を意識して仕事を体験できますが、賃金を得ることは、その企業によってばらばらです。
バイターンは高校生を対象とした、将来に繋がる仕事を体験しながらお金を対価として得ることができるシステムです。
現在、キャリア支援センター推進連絡協議会が立ちあがり、神奈川県教育委員会、神奈川労働局や管轄のハローワーク、神奈川県横浜市青少年育成課・NPO法人などが構成員となって、具体的な取組が行われています。
このバイターンは、家庭の経済的事情で就職活動を思うようにできない生徒を支援することを目的としており、若者を育てようとする視点で、中間的就労に近い役割をしています。
ここで注意を要することは、安上がりの貧困ビジネスにならないようにしないといけないということです。実際、企業側にしてみると即戦力にはならないという現状があります。
しかし、中には若者支援に熱い気持ちを持った、社会的貢献に力を注いでいる企業もあります。また、さらには、企業側は若い人を求人したいという想いがあります。
企業がバイターンを採用することで、多少、その困難さがあったとしても、試行錯誤をしながら人材を育てるということが、結果として、企業の従業員に対し、モチベーションを上げることに繋がり、よりよい相乗効果が出ているそうです。
連携可能な外部機関との関係づくりが、この制度を支えています。
適切な支援を継続していくためには、校内の資源だけでなく、校外の様々な資源を活用し、支援に関係する専門家との連携・協働が必要となってきます。
田奈高校が取り組みを始めているキャリア支援センターでは、スクールソーシャルワークを組織的に構築しており、生徒の抱える様々な困難な課題や経済的な問題を始めとして、教育や学校の枠組みの中だけでは解決のし難い諸問題を卒業後まで支援をする体制が整っています。
卒業後まで続いているこの支援体制が、高校という枠組みを超えて、「センター的な機能」を構築しています。
学校を学びの場として留まらず、「社会のセーフティネット」として再構築し、教職員の要請や校内体制の整備、外部資源との連携システムを築き上げました。
しかし、これらの支援を実質的にリードしていくための人材の養成とスキルアップの継続を行っていくことが次の課題になっているそうです。
キャリア支援センターでの人材育成という課題はありますが、今回、視察①で述べた校内で行われている支援体勢をはじめ、管理職のマネジメント能力の高さには、大変目を見張るものがあります。
中核で行う管理職が疲弊をしては、適切な支援を継続的に生徒に行うことは不可能です。
しかし、そのような中で、教職員一丸となって気になる子供たちの把握とアプローチによる支援教育の展開には、学ぶべきところがたくさんあります。
田奈高校は、若者の自立支援の一端を担う役割として、生徒の卒業後までケアする、専門的な機能を併せ持っています。
全国的にも田奈高校のような支援整備を早急に整えるべきと考えます。すぐにでも、導入すべき重要施策です。
文科省・厚労省含め、田奈高校で行われているこの先進事例を、今一度検討し、導入していくことの必要性と重要性を感じた視察でした。
私はこの取り組みをさらに拡充した形で、発達障害傾向にある人への支援につながる施策を今一度、しっかりと考えていきたいと思います。
本日は、貴重なお時間を頂き、長時間にわたりご丁寧にご説明頂き、大変勉強になりました。
本当にありがとうございました。