今日は関東平野の中ほど、埼玉県北部に位置し北に利根川、南に荒川が流れる埼玉県名発祥の地と言われ国宝「金錯銘鉄剣」が出土したことで知られる「埼玉古墳群」がある行田市に行ってきました。
人口は85597人・世帯数が33636世帯です。
今回、こちらの行政視察をした理由は、発達障害当事者・家族支援の構築に向けての研究の一環で鳥取県の視察に伺った際に、管理職の方からこの行田市を紹介されたことがきっかけです。
この行田市では、平成20年度に「トータルサポート推進事業」が開始されました。一人ひとりに適したサービスをコーディネートして市民参加の窓口となる「ふくし総合窓口」を開設しています。市の組織体制も工夫して、福祉・保健分野の職員が一致団結して支援相談にあたるため、トータルサポート推進担当という総勢25名の専門職チームを配置したそうです。
お話しによると、この組織内の横断的連携体制を基盤に、児童・高齢者・障がい者の虐待を防止するための「包括的虐待防止事業」行田方式の地域福祉推進モデルを作る為の「福祉のまちづくりシンポジウム」や小学校区単位の市民と行政との話し合いの場としての「ささえあいミーティング」などを進めてきたとの話でした。
このような取り組みの中で、何かしらの困り感があっても相談に乗れない人たち、どこにもカテゴライズされない人たちがいることが浮き彫りになってきたそうです。
制度の谷間に落ちている人たちに如何に手が差し伸べられる支援制度として構築することができるか
この問題点を本日は担当部署の方と議論を交わす事ができました。
カテゴライズされない人たちとは、発達障害特性を持った人たちのことです。
当初から「虐待」と「発達障害」が、この行田市のトータルサポートの重要なテーマとして重点項目になっていたそうです。
発達障害については、国として平成17年4月から法に基づいた取り組みがスタートしています。これまで制度の谷間におかれ、必要な支援が行き届きにくい状態となっていました。発達障害は、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳の機能障害です。
発達障害は「先天的なハンディキャップなので、ずっと発達しない」のではなく、発達のしかたに生まれつき凸凹がある障害です。時代背景、その国の文化、社会状況、家庭環境、教育など、多様な外的要因に影響を受けながら、一生かけて発達していく生物であり、発達障害の人も同様である。つまり、成長とともに改善されていく課題もあり、必ずしも不変的なハンディキャップとは言い切れないものであるとのお話を伺いました。以下、担当部署の方からのお話です。
発達障害は、個人差はあるけれども「障害だから治らない」というのではなく、周囲が彼らの凸凹のある発達のしかたを理解しサポートすることにより、「ハンディキャップになるのを防ぐ可能性がある」という視点をもつことが重要であるそうです。 但し、ここで重要なことは、先の見通しもなく早期発見だけして十分なフォローアップがないと本人や保護者(当事者が子どもであれば)に苦悩を与えるだけでそれでは障害受容などできないという問題が発生するそうです。
国は発達障害のある人が生まれてから年をとるまで、それぞれのライフステージ(年齢)にあった適切な支援を受けられる体制を整備するとともに、この生涯が広く国民全体に理解されることを目指しています。大事なことは、その人がどんなことができて、何が苦手なのか、どんな魅力があるのかといった「その人」に目を向けることであり、その人その人に合った支援があれば、だれもが自分らしく、生きていけるとのお話しでもありました。
担当部署の方が、発達障害者の支援においては、それぞれの関係機関が求められる役割を把握し、遂行していくことが重要であるともおっしゃられていました。まさに関係機関同士が、お互いの役割を明確に認識し、部局を超えて統括できる組織編成が必要となります。
他の自治体での視察の際にも同じことを言われましたが、継続的に取り組みが行き届くよう専門官を設置する必要性がこの分野には十分あります。発達障害の特性のある人たちは、どこにもカテゴライズされないため、支援することが難しくなります。
この2年間、様々な専門機関や自治体に行き、発達障害についての調査・研究を進めてきました。最近、これらの視察を通してやっとライフステージごとの問題点が徐々に見えてきました。
これからは自分の政策として、何が不足し、何が求められるのかをしっかりと見極め、政策立案をしていきたいと思います。
本日は行田市健康福祉部福祉課 保健師・認定心理士でもある野村政子さんから大変貴重なお話しをいただきました。
専門的なお話を本当にありがとうございます。
本日頂いた内容を糧にして、今後も発達障害施策の支援に向けて全力投球して行きたいと思います。