2007年4月の区議会議員選挙の際、「誰もが安心して暮らせる街づくり」、「みんなに優しい街づくり」を公約とし、当選後は、その実現に向けて、様々な政策提案を行ってきました。
現在では私が政策提言をした内容が、カラーユニバーサルデザイン先進区として、全国的にも注目されています。その後、さらなる気づきを受け、2013年3月の足立区議会の代表質問において、知的障がいを伴わない発達障がい特性のある「生きづらさを抱えた人」に対する支援事業の構築に向けた政策提案を行い、2017年の現在に至るまで、議会、委員会、またHPや区議会レポートなどで多角的に取り上げてきました(ホームページ議会活動等
http://takahase.weblogs.jp/を参照)。
私が提案した発達障がい支援施策は、「普及・啓発」「相談支援」「発達支援」「就労支援」「家族支援」という5つの事業です。中でも、発達障がい特性がある子どもの親が同じ立場の親に対して、相談や地域情報の提供や専門機関への紹介などを通して行う当事者支援活動「ペアレントメンター」を提案し、東京23区で初めての事業化に成功しました。
1知的障害を伴わない発達障がい特性のある
「生きづらさを抱えた人」に対する支援事業の必要性
知的障がいを伴わない発達障がいは目に見えにくい、分かりにくい障がいです。
そのため、生活面や学習面において、ある程度カバーできる面がある反面、発達障がいが気づかれにくくなっています。幼少期から青年期にかけて、社会との適応に少なからず障がいがあったとしても、学力には優れ高学歴の人も多い為、当事者だけでなく保護者も障がいを受容しないケースや当事者が障がいに全く無自覚で、多少の生きにくさを感じていても特に困り感をもたないケースもあります。
東京都発達障害者支援センターによると、ここ数年、一般企業や大学からの相談件数が増加しているとの調査結果でした。内容は、処遇方法、医療機関等との連携、社会生活全般に渡り、就職や退職に関するものなど、多岐にわたります。また、足立ハローワークでは、学生サポートセンター(大学の就職支援担当部署)からの問い合わせが多く寄せられているそうです。
これらの事例でもわかるように、一定の年齢になるまで本人も気が付かないまま成人になり、社会に出てから対人関係がうまく保たれずに人間関係でつまずき、うつや引きこもりなどの二次障害を引き起こし、本人や家族が苦しんでいる現状があります。
如何に当事者に発達障がいを自覚させ、未熟なスキルを学ばせていくか。当事者の障がいの程度を家族が受容し、如何に当事者に対する接し方を家族が学んでいくか。
制度の谷間に落ち、生きづらさを抱えている当事者、そしてその当事者を支え、壮絶な体験をし続けている家族に対して、その具体的・効果的な支援を早急に構築する必要があります。
3足立区での発達障がい支援施策への提案・成果
(2013年2月~2017年8月までの議会提案)
(1)
成人期の発達障がい者支援の提案をし、区主催の区民向けワークショップ・講演会が現在も実施されています。
(2)
区職員への大人の発達障がいについての研修を提案し、実施されています(足立区役所内での専門家による人事研修)。
(3)
「ディスレクシア・学習障害(LD)児への支援」の提案に足立区の予算が付き、学習障がいの子ども達に対する有効な教材MIMを足立区小学校全69校で購入し、学習支援が現在も実施されています。
(4)
区民が身近に手に取ってみることができるよう区民向けリーフレットの作成と区民に対する周知啓発活動を提案し、実施しました(このリーフレットは、発達障がい特性の生きづらさを軽減するヒントが書かれています。※福祉部リーフレット
外面・
中面 添付資料参照)。
(5)
大学との連携を提案し、この結果、東京電機大学の学生支援事業として、発達障がい特性で友人や教員等との適切な人間関係を築くことができない、就活時の適性判断ができない、したいことや働くイメージがない等の学生に対して、発達障がい(診断名の付かない学生も含む)の学生が自己認識を高め、在学中の課題を解決しながら、卒業後の社会生活に必要な知識・スキルを習得し、自分に合った進路・生き方を思考できるようになるための支援事業が行われました。このことにより、日常的に学生のサポートにあたる教職員に対し、発達障がいに対する正しい理解と対応方法を習得させることや、当事者に対する自己の特性理解の促しと学校生活の中での対人関係や生きづらさの緩和、学業や就職活動に活かし、大学中退や引きこもり、二次障がいとしての精神疾患等を予防することにつながりました。
(6)
地域で構築する相談機能、情報の収集・発信、居場所機能を持たせることに着眼し、発達障がいのある子を持つ親の居場所「ペアレントメンター事業」を柱にした取り組みを研究し、議会で提案し強力に推し進めました。
発達障がい特性は様々です。発達障がいは、周囲からなかなか理解されにくい障がいであり、一人で悩みを抱えてしまう保護者もいます。このような保護者に対して、同じ発達障がいのある子どもを持つ保護者が相談相手となって、悩みを共感したり、自分の子育て経験をとおして子どもへの関わり方等を助言したりして、発達障がい特性がある子どもの親が同じ立場の親に対して、相談や地域情報の提供や専門機関への紹介などを通して行う当事者支援活動「ペアレントメンター」事業を提案し、ペアンレントメンター準備委員会を立ち上げ、東京23区で初めての事業化に成功しました。(
※ペアレントメンター 添付資料参照)
※先輩保護者から子育て等に関する経験談を聞くことで、これから我が子にどのような準備をしていったらよいかの見通しが持てます。同じ親としての視点から同じ境遇の子どもの障がい理解や障がい支援を行います。
(7)
発達障がい児支援事業の提案により、今年度、足立区では「つながる支援」事業が実現しました。
増加する発達支援児への対応:予算額:8062千円
相談しやすい窓口を作る 2432千円
・0歳児からの発達相談窓口を、障がい福祉センターから子ども支援センター元気に移管し、障がい受容の有無に関わらず相談できる窓口を開設。
途切れない情報の連携を目指す 2578千円
・保育所等に在籍する発達支援児の合理的配慮内容を保護者とともに作成する個別支援計画をもとに就学先に伝え、支援の継続を図る。
発達支援委員会の充実を図る 3052千円
・医師・心理士・関係職員などで構成する発達支援委員会を開催し、発達支援児の判定、検討された指導内容を在籍園等に助言をする。
・増加している発達支援児に適時きめ細やかな対応を(非常勤保育士の配置や児童の障がい状況把握)をするため、委員会開催数を増やす。
平成28年は6回→平成29年は8回
(8)
ペアレントメンターを通じて「発達障がい児・者の個別カルテ(個別支援計画シート)」の作成が開始されました(
※いいとこ綴りノート+サポートブック作成会)。
5今後の取り組み
足立区では、0歳から就学前の乳幼児が約4万人いる中で、文部科学省が示す特別支援教育が必要とされる対象児が全体の3.33%、発達障がいの可能性のある児童6.5%の人数を合算すると足立区で約4000人の乳幼児に発達支援が必要とされています。
しかし、支援を必要としている推定数4000人に対して、区として受け入れられる療育機能を兼ね備えた発達支援センターは2か所(足立区障がい福祉センターあしすと、うめだ・あけぼの学園)で、定員は150人です。区内には民間の児童発達支援事業所10か所(定員95名)もありますが、それを併せても、受け入れ可能数が極めて不十分な状況となっています。
現在、「障がいの発見・気づき」後の早期対応が長らく待機という状況で療育支援につながらない方々が多く、足立区に置いては極めて不十分な現状になっています。
待機期間には親子での療育支援が受けらないため、相談から発見・支援につながるまで、親の不安感は計り知れないものがあります。
今後、発達障がい児・者の子育てサポートのサービス創出や、相談利用の方の一時預かり機能など、様々な当事者視点の地域福祉サービスを創出・拡大できる可能性を探りながら、居場所機能の拡充とそれぞれの児童の障がい特性に合った支援(療育を含む)を的確に行い、幅広い年齢層で同じ悩みを持つ親の交流を可能とする支援事業を視野に入れながら、多角的な政策提案とその実現に向けた活動を精力的に行っていきたいと思います。